去る2019年3月23日、「beatmania IIDX 20th Anniversary Party "Ring"」というイベントが開催された。
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IIDXに触れて15年、不思議な縁により公式のイベントに関わらせていただいたので、記憶だけでなく記録にも残しておきたくなり、今この記事を書いている。
2004年、友人が持ってきたCSの5th Styleに衝撃を受け、
2005年、初めて筐体にカードを通し、
2010年、Twitterの力で友人がたくさん増え、
2012年、好きが高じて情報サイトなどを立ち上げ、
2017年までに12回の大会を開催。気づけば色々やっていた。
ちょうどbeatmaniaが20周年を迎え、先人たちがとんでもないイベントを開催して、ハンマーで後頭部を殴られるような衝撃を受けた。
そして2019年の来る20周年に向けて、なんとなーく何かやりたいと思っていた。
いつもお世話になっているハナダさん、DOLCE.さんに、軽い気持ちで相談を持ちかけたところで、「何かやろう」という話になった。
DOLCE.さんはプロとして、我々と公式の橋渡しをしてくれた。
気がつけばイベントは公認から公式へと昇華し、名前と会場と催し物が決まり、展示するアイテムの手配や、トークショーの人選、連絡、台本、スライドの手配、Webの構成など、自分にできることをたくさんやった。
その間、「今自分はプレイヤーとして貢献できていないのに、こんなイベントを手伝う資格はあるのか?」と悩んだりもした。
デザインの発注周りや、連絡不肖で沢山の人に迷惑をかけた。
そして開催前日、出来上がった展示スペースにまず感動した。
周年イベントをやるなら、これは絶対にやりたいと思っていた。人に頼ることが前提の企画だったが、快く協力してくれた皆さんに多大なる感謝を述べたい。
開催当日、朝の時点で人が集まっていることを知り驚いた。
会場キャパの問題で、急に整理券方式に切り替えてしまったことは申し訳なく思った。
当日のボランティアスタッフとして集まってくれたメンバーと朝会をした。
前日で準備しきれなかった問題を解決してくれたり、イベントがよくなるようにそれぞれ動いてくれた。
こういう催しに慣れたメンバーが多かったのは、非常に心強かった。
選手が入ってくる。彼らの中には、僕のことを知っている人もいる。久しぶりに挨拶を交わした人もいた。
だがほとんどの人は、自分のことなど名前も知らないだろう。
過去に大会を主催したときは、前のめりに名乗ったりもしたものだった。
しかし今は、名もなき運営のひとり。必要以上に前に出ることはないだろうと、自分を諌めた。
一般入場の人たちが入ってくる。
展示物を見て「すごい」と声を漏らす人々。その一言に何度も胸がすいた。
自分が好きで、一緒に歩んできたゲームの歴史を、今ひとたびその目に焼き付けて欲しい。
その想いが届くかどうかはわからないが、少しでも人の心を動かせたなら、嬉しい。
ドリームマッチが始まる。
日韓の選ばれしプレイヤーたちによる、感動的な一幕。
自分は決してあの舞台に立つことはないだろう。
だが、間接的に、あの舞台を作り上げることに関わることができるというのは、それはそれで貴重な体験だ。
トークショー。
人選のバランスが非常によく、全体の構成も良かった。
「IIDXが見せてくれる未来」というテーマは、僕の中からは出てこない一文だった。
これが決まったから、全体の流れが引き締まったような気がする。
時間が許しさえすれば、永遠に話を聞いていたい。そう思うくらい、夢のような時間だった。
そして、テーマソング。
ここでは大きくは触れないが、Hommarjuさん、本当にありがとうございました。
イベントが終わる。
まずは何事もなく、無事に終わったことに安堵する。
片付けをして、帰路につく。
片付け中にも、スタッフの間には笑顔が溢れていた。本当に、良かった。
Twitterを見ても、満足してくれたようなコメントをしている方が多くて安心した。
長時間座らせてしまったり、会場が狭かったり、暑かったり、至らない点もたくさんあったと思う。
だけどまず、内外問わず関わってくれた人全員にお礼が言いたい。
ありがとうございました。
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そしてイベントから二晩経ち、その間こんなことを考えていた。
主催がいて、会場があって、運営がいて、演者がいて、それを見に来る人がいて。
「みんなが主役」と言えば聞こえはいいが、運営スタッフに目を向けられることは、ほとんどない。
この箱の中で、自分は主役ではない。当然である。
自分が胸を張って「主催です」と言えるStratosphereでさえ、自分は「主役」であるとは思っていない。
自分がすごいと思う人達が協力してくれる。それは本当にありがたくて、頭が上がらない。
人を集める力がある「彼ら」のお陰で、自分はここに立っていられる。
もうすぐ生まれて30年経つが、すっかりそういう生き方が染み付いてしまって、「自分」の自信がどんどん減っていく。
「人を動かせるのはすごい」と言われても、「それは動いてくれる人がすごいんだ」と返してしまう。
自分から影に隠れようとしているのに、影の中にいる自分を見て欲しい、という矛盾を孕んだ欲望が、常に付きまとっている。
去年はこの呪いに支配されて、自分のための創作を含め、何もできない時期があった。
今は回復しているものの、きっとこれは一生根に持つタイプのそれだと感じていて、本当に面倒くさいヤツだなと思う。
こんな僕によくしてくれる人たちは本当にすごい。一生尊敬します。
そして最後に、Ringを通して、この感情と向き合って気づいたことが一つ。
自分の人生における主役は自分なのだ。そう言い聞かせて、この記事を世に放たせていただく。